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これは泣ける

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 『一人二役』 ワニブックス 河本準一 価格 1,365円(本体1,300円+税)

 入荷してきました。やはり只者ではなかったようです。

 講談社社内情報紙「出版情報」が届きましたよ。
僕のが最初に乗っていまして、続いて往来堂さん、書店新聞編集長、新文化通信社と載っていました。以下です…

  セミナーで、本好きは書店経営には向かないと言われて

 小説現代と週刊現代を店に取り置きにしている権田さんご夫妻が砂川に移り住んできたのは10年くらい前になるでしょうか。趣味のラジコン機を自由に飛ばせる場所を求めて北海道にやってきたのです。その権田さんがかつて少年マガジンの編集部にいた人だと聞いて、それなら是非にとお話を伺うことにしました。友人たちや店のスタッフの前で週刊マンガ誌の歴史や、手塚治虫先生のところに原稿を取りに行った時の話しなどを楽しく聞く事が出来ました。
 実際に本作りの現場にいた人の話を私たちが直接聞く事は殆どありません。同じ世界に住んでいて、目指す方向は一緒であるはずなのにとても遠くに感じられます。権田さんの話を聞いて、改めて同じ世界を支えあっているお仲間なのだと感じたのです。
 本の価値は出版社と著者が本を作り上げた瞬間に生まれ、その利益は本屋の店頭でお客様から代金を頂いた瞬間に発生します。これが基本であり原則であり続けるはずです。
スポンサーの広告収入を当てにした雑誌作りは、結局は破綻します。暮らしの手帖の例を持ち出すまでもなく、お金を払ってでも読むべき雑誌作りの原点はあくまでもシンプルであるのでしょう。予算がつくと知恵が引っ込む、そのしっぺ返しは悔やみきれないくらいの厳しさで襲ってくる物なのです。「耐震偽装 月に響く笛」という藤田東吾氏の本が結局B社からは出版できなかった事を考えていただきたい。本作りに携わっている人達は「書物の持つ力」というものをもう一度見直していただきたいのです。それが僕ら「売る」人間に力を与えてくれるのですから。
身から出た錆くらい始末の悪い物はありません。売れない理由ならいくらでも言える人、それが全て自分以外の事であると言うのなら、全ての原因はその人間の側にあります、間違いありません。日本中の全ての業界で「夕張化」が進んでいるように思えます。

 隣町の老舗書店が店じまいした時のことです。本好きの新聞販売店の社長から電話が来まして、本を配達してもらえるか?と言うのです。以前からの知り合いでもあったので、出掛けていって話しあい、共同で本と雑誌の宅配をやろうかという事になりました。
 早速、新聞折込のチラシを作り雑誌の予約を取って配達する体制を作りました。予約の納品書をつけた雑誌を販売店に届けて、配達と集金をやっていただく事にしたのです。自分で全てをやる場合に比べて利幅は少なくなりますが、月末までに集金がなされる事によって資金繰りに余裕が生まれます。
 実は販売の現場=書店が一番苦しんでいるのがこの資金繰りにあるのです。最大の原因は取次まかせの仕入れに甘んじてきた各書店の側にあるのでしょう。数年前から本屋としての反省を込めて、自分で数字を拾う作業に取り組みました。ウインドウズパソコンに「本屋の村」が開発したソフト「ラクプロ Ⅱ」をインストールし外商管理と発注管理に取り組みました。雑誌の管理だけでしたらこれで充分です。問題は日々増え続けるISBNコードがついている商品です。
 一昨年、日販POSレジのリース契約が終了するのを待ってPOSレジの自作に取り組みました。バーコードスキャナー、キャッシュドロア、カスタマディスプレイ、レシートプリンター等を購入し、組み立てました。レジ専用のパソコンも含めて30万円くらいでしょうか。POSレジは在庫の商品のISBNコードを全て読み取る事、つまり棚卸によって命を吹き込まれます。販売一覧表には昨日売れた商品の履歴が出てきます。発売日、入荷数、前日の売上数、過去の売上実績、現在の在庫数が表示されているので、これを参考に発注するかどうかを判断します。
 POSによる管理とは「売れない事」と向き合う作業に他なりません。気がつかないうちに何回転もして、累計では思わぬ売上実績を残しているイキのいい本。反対に売れているような気がしていたけど実は壁の花、もしくはババ抜きのババに過ぎなかった本もその正体を現してしまいます。よく言われることですが、全体の2割の商品が売上の8割を担っていると言うことが数字で証明されるのです。
自分では精一杯面白そうな本を選んで並べていたつもりだった棚の現実が目の前に立ちはだかります。いろいろ並べてはいるけど、今読むべきオススメの本はどれだろうか?どうせそうは簡単に売れないのが現実であるなら、取次まかせになんかしないで、自分が売りたい本を並べたらイイじゃないかと思ってきたわけです。何か面白い本は無いかい?と訊かれて、すぐに差し出せるようにね。
 「驚くほど本を読んでいない」人々に囲まれて孤立無援の闘いをしているような気分に囚われてしまう時があります。パソコンの進化=IT化が人間をこき使う方向に作用し、生活にゆとりをもたらす方向には作用していないようです。書店の大型化、ターミナルへの集約が進んで、街角の(気楽に立ち寄れる)本屋が駆逐されていった事も原因のひとつでしょう。人は「会社に利益をもたらす為の働く機械」などではありません。
 仕事は人生の一部であって、人みな全て、心豊かに生きて、愛して、自分らしく死んでいく為には自分の人生に寄り添ってくれる書物と友人が大切なのですよ、と事あるごとに言い続けて自分を奮い立たせて来ました。
高校時代の友人でカナダ在住の金谷武洋君が本を書いたからヨロシクというメールを受け取ったのは昨年の暮れでした。『主語を抹殺した男/評伝三上章』(2006年講談社)です。早速取次に発注し、同期生のmixiで「金谷君の新著の予約を募ります」というトピックを立ち上げました。
 
 金谷君はカナダで日本語を教えていて、外国人に日本語の文法を説明するのにエライ苦労をしていたと言うのですね。そんな中で三上文法と出会って眼からうろこが落ちたというのです。
 当時のメールですが…「おお、ありがとう。是非、協力願います。僕のためというよりも文法学者、三上章の名誉のために。そして屋台骨が英文法で出来ている明治以来(大槻+橋本)の学校文法を根本的に改革するためにね。日本人と日本語にとってこんな不名誉で情けないことはない。熱い本を書いたつもりなので、出来たら8期のみんなも読んで大いに怒ってくれたまえ。こんな不正義は許せない、と」
 彼がどれだけ熱い想いでこの本を書き上げたかが伝わって来るでしょう。確かに僕らが受けた国語の授業は面白かったのです。大学を出たばかりの若い先生が一学期の間ズーッと毎日プリントを配って展開したのはなんと「詩」の授業でした。明治期の詩人たちが大変な苦闘を重ねて新しい日本語を獲得していく様を僕らは学んだのです。
 日本国内で高校の授業がどんどん面白くなくなっているようです。それは文部科学省の指導要領が教育の現場の自主性を奪っている事も原因のひとつである事は確かでしょう。指導書どおりに授業をこなす教師しか必要とされないとしたら、面白い授業など望むべくもありません。学校文法がつまらない授業のままで放置され、多くの学生が日本語の世界に興味を持たないようにしむけられたこと。そして三上章のような批判者の存在を無視し続けた事は日本人とその文化に対する犯罪行為に等しいものです。
 明治期の詩人たちの営為を学び、海外にいて指導要領に縛られずに日本語の授業を作り上げようと苦労していた金谷君がこの本を書いたと言うことはまさに当然の帰結であったのかもしれません。
 そしてこれも同級生である九州大学の新谷恭明君が『学校は軍隊に似ている』(海鳥社)という本を書いて、今の文部科学省の教育行政と学校のあり方に小気味よく反論と提言を積み上げた事も、してやったりと膝を打ったものです。
 インターネット(mixi)で繋がった高校時代の同期生が次々とこの本の注文をくれました。僕はせっせと日本中に発送し、2月末で16冊を売り上げました。この売れ方も面白いのですが、実は話はコレでは終わりませんでした。日本中いや世界中に散らばった同期生たちのやり取りの中からまだまだ話は広がっていきそうなのです。
 三上章の生家が広島県甲田町(現在は安芸高田市)の造り酒屋だったことはこの本の中に出てきます。その弟さんが賀茂鶴酒造の社長だったり、その祐二さんのお孫さん、神吉加奈子さんは「家の光」の編集者だったりと、酒屋、本屋の守備範囲に渉る点と線が繋がっていくのです。「文法」と「酒」と「日本農業」のコラボで、しかもキーワードに「土着主義」を据えてもう一冊書けそうだなどと仲間内で盛り上がってしまいました。実にこの本のおかげで世界の見え方が変わってきました。三十数年ぶりに高校時代の友情が復活し、しかもそれぞれが経てきた経験が物を言って思いもかけない展開を見せてくれたのです。  
 本好きだから出来る、いや本が好きな人間でしか出来ない本屋を自分は生きていこうと改めて思ったのでありますよ。

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受信: 2007/04/30 13:04

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